海上タクシー船長が綴る 瀬戸内海と島々のブログ

直島諸島クルーズ体験レポート

お知らせ

海側見た宇野港の風景

岡山県玉野市にある宇野港。
瀬戸内海に面した同港は、岡山県から直島など瀬戸内の島々へ渡る玄関口として世界中から多くの人が訪れます。
港付近の公園にはアート作品が飾られていたり、徒歩圏内におしゃれなカフェが点在しているため芸術祭の会期中でなくても町歩きを楽しめます。
そんな宇野港で、陸だけでなく海上の散歩を楽しめると聞き、早速体験に行ってみました。

 

体験させていただいたクルーズを提供しているのは、海上タクシー川西マリンサービスさんです。
同社は昭和三十一年の開業当初は玉野市石島の商店として、商品の仕入れや島民の足などで活躍しており、昭和五十五年二代目繁清丸就航とともに、渡船業へ移行。
海上タクシーの先駆けとして約半世紀、瀬戸内海の岡山・香川の島々を結ぶお仕事を続けてきたそうです。

船を操縦する川西マリンサービスの代表

船長をつとめてくださった三代目代表の川西孝明さんにお話を聞かせていただいたのですが、流石三代目!瀬戸内海の島々の豊富な知識をお持ちで、各スポットについて昔から伝わる逸話や、見所などをたくさん聞かせてくださいました。実際のクルーズでも、船内アナウンスなどで詳しく見所を紹介してくださるそうですよ。

 

今回乗船させていただいたのがこちらの船。

瀬戸内海に浮かぶ、大型クルーズ船のマリンストーク

白い船体には、青いラインと船名が描かれています。どんなクルーズが出来るのか、乗る前からワクワクしてきます。

マリンストークの広々とした船内の様子

船内は鮮やかな緑色を基調としていて、とっても可愛い!
両側には窓が取り付けられていて、船内なのにとても開放的でした。
さらに船外には、瀬戸内の爽やかな風を感じながら航行を楽しむことができる席があるのも嬉しいポイントです。

 

直島諸島クルーズ、コースマップ

クルーズのコースは、宇野港を出発して直島諸島をぐるりと周る75分の行程で、いくつかの見所を回っていきます。

 

クルーズのオプションで注文できるお菓子BOX

さらにこのクルーズでは、別途オプションとして玉野市の老舗菓子屋、なかや宗羲さんのお菓子ボックスを楽しむことができます。
和菓子や洋菓子など4種類に、お茶がついて、クルーズ中小腹が空いても安心です。
どれも美味しいので、ついお菓子に夢中になって、素敵な景色を見逃さないように気をつけてくださいね!
お菓子BOXはクルーズ予約の際にご注文となりますので、旅のお供にぜひ味わってみてください。

 

海の色が綺麗な瀬戸内海の大海原

体験当日は十二月にしては暖かく、晴れの国岡山らしい晴天。
クルーズにはもってこいの天気でした。
宇野港の小型旅客船乗り場から出発すると、太陽を反射した海面がキラキラと輝いていて、うっとりするほど綺麗な景色が広がります。

 

景色を堪能していると最初に見えてくるのが、五人宗谷(ごにんぞわい)と呼ばれる五つの岩。

海から現れた五人宗谷

川西さんによると、むかしむかし五人の座頭さんが島に渡るために船に乗ったが、船頭が「船のアカを落とすので、その間この五つの岩の上で待っていてほしい」と騙し置き去りにされてしまったという、曰く付きの岩なんだそうです。
潮が引くと姿を表すその岩は、ごく最近まで地元の漁師さんも近づかない場所だったそう。
「岩礁が多い場所なので、近づかないようにそんな怖い話を作ったんじゃないか」と川西さんは笑っていましたが、ちょっぴり背中がゾクっとしてしまいました。

 

安野島にある、岩が積み重なって雪だるまに見える大きな岩

次に見えてくるのが屏風七島エリア。
このエリアでは島々を縫うように進んでいくので、船の上から島の様子をみることができます。
玉野市でよく見られる奇岩がところどころで見られ、中にはまるで人に見えるような岩や、雪だるまのような形などなど、想像力をかきたてられる面白い形がたくさん。
島の間を進む迫力もあいまって、大人気なく大はしゃぎしてしまいました。
このエリアではぜひ船外の席で、風を感じながら島々の迫力を体験してください。

 

海から見た石島の町並み

屏風七島エリアを抜けて見えてくるのが石島エリア。
全国的にも珍しい、人が住んでいる島で県境があるという石島。
島には観光客が来ることはほとんどないということですが、一部の県境マニアの方がやってくるそうなんです。
岡山県と香川県の県境の八十八箇所に四国遍路の霊場を模した、お地蔵さんが立っており、かつては巡礼をする方もいたのだとか。
船の上からそんなお話を聞いていると、なんだか石島が身近に感じられて、島を歩いてみたくなります。

 

船から見た本村港の町並みの様子

直島の裏口とも呼べる本村港は、大きなフェリーが入ることのできない小さい港です。
このエリアが島民の生活と直結しているという、面白いお話を聞くことができました。
本村港の目の前にある島、向島。
向島に学生がいた頃、なんと直島まで手漕ぎボートで渡ってからさらに船を乗り継いで学校に通っていたそう。
島民にとっては、船が当たり前の交通手段。
海を渡るのが生活の一部というのは、大変ですが一度は体験してみたくなります。

 

そんな港から尾高島を回って、琴弾地エリアに入ると目に飛び込んでくるのが瀬戸内の大海原。

瀬戸内海の大海原と遠くに見える高松の町並み

天気が良いと見えるという香川県高松市も対岸に見え、瀬戸内海の広さにただただ圧倒されました。
大海原の上を小さな船で進んでいくのは、大冒険をしているようでドキドキする反面、どこか心細いような不思議な気持ちでした。
日本にいるはずなのに、海外に行った時のような非日常感は、このクルーズ体験の中でも強く印象に残りました。

遠くに見える瀬戸大橋と大槌島

海から見たフェリーと宮浦港

クルーズ体験も終盤になり、直島の正面玄関、宮浦港に入ります。
ここは他のエリアと比べて、現代アートや海の駅、大型フェリーの発着場があるなど、とても近代的です。
見たことのある赤いかぼちゃは、思わずカメラを向けたくなります。

 

海から見た宇野港と直島行きの停泊中のフェリー

今回このクルージングを体験して見て、初めて岡山県に訪れた方も、何度も訪れたことのある方もぜひ参加してほしい内容でした。
風の穏やかな瀬戸内海は波も穏やかで、船酔いの心配も少ないのでしっかり景色を楽しむことができます。
その上、季節、時間などその時々で自然が見せてくれる表情は変化します。
クルーズコースはあらかじめ決められたものでしたが、川西マリンサービスさんでは様々なプランを用意しています。
別コースでのクルーズはもちろん、無人島への渡船からキャンプ体験まで様々。
クルージングや島々との交流を通して、瀬戸内の豊かな自然との一期一会の出会いをぜひ体験してください。

 

体験レポート:ライター 大原 彩